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英国史上まれに見る極悪人として名高いリチャード三世の真の人物像を探ることを目的としています。
シェイクスピアの描いたリチャード三世以外のリチャード三世像があることを、一人でも多くの方に知っていただければ幸いです。
2012年9月12日、レスターのグレイフライヤーズ修道院跡からリチャード三世の遺骨が発掘されました!(2013年2月4日に調査結果が発表されました)

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『ブラッド・プライス―血の召喚―』

ブラッド・プライス―血の召喚―』 (原題 Blood Price 1991年)



ブラッド・プライス―血の召喚 (ハヤカワ文庫FT)



タニア・ハフ (著)
ハヤカワ文庫FT
絶版?

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新大陸ヴァンパイアもの。トロントで起きた猟奇的連続殺人事件に、女私立探偵ヴィッキーと、ヘンリー八世の庶子ヴァンパイアが挑む。



この記事を「書籍(リチャード周辺色々)」というカテゴリに入れるのは不思議に思われるかもしれないが、私的には間違いなくこのカテゴリなのである。



この本は、psyさんの紹介記事で知った。特に惹かれたのが次の文。





彼が過去を振り返るのだが、
「ロンドンだった。1593年。エリザベスが玉座についてしばらくのこと。彼の死後、57年がたっていた。リチャード三世のプレミア公演を観てきたばかりで、劇場から歩いての帰り道。全体的に楽しめた。劇中の王については、性格描写が歪曲もいいとこだと感じたが。
とあって、首斬りハリーの息子にしてはいい奴だな、君!と思った。



うん、いい奴だ、と共感して、しばらくして本を入手したのだった。……こんな些細なことで心惹かれてしまうのが我ながら哀しいが、いかんともしがたい。もちろん、psyさんの「結構面白かった」というコメントも購入理由のひとつではある。
ちなみに、「彼」というのはヴァンパイアにしてヘンリー八世の庶子ヘンリー・フィッツロイ。「首斬りハリー」とは勿論ヘンリー八世のことだ。



主人公のヴィッキーが元・殺人課刑事で私立探偵ということもあり、なんとなく毛色の変わったミステリ、というか"探偵小説"のノリで読んでいたら、ラストの展開に唖然とした。そういえば、これはファンタジー文庫だったんだ、ミステリ文庫ではなく<もっと早く気がつけ
タイムリミットが迫る中、御都合主義的に犯人がわかるが、まあ、それは良し。ヴィッキー自身も「棚ぼた」と言っているし。むしろ、ラストの魔物の言動が妙に人間臭いのが気になった。が、全体として面白かった。



続編(全5作+短編集1作がある)が訳されたら買おうと思っていたのだが、一向に翻訳されない。本作の邦訳は2005年だから、もう3年になる。評判イマイチだったのだろうか?いつの間にか絶版になっているようだし……
御耽美ものでもロマンス小説でもないし、ヴァンパイアがぞろぞろ出てくる訳でもないから、日本での受けは良くないのかなー。北米では人気があって、後日譚も出ているのだけど。カナダでは、"Blood Ties"のタイトルでTVドラマもつくられている。ヘンリーの回想が挿入される辺りは、歴史的な知識・興味がないと面白くないかもしれない(それを考慮したのだろう、訳者あとがきで補足説明されている)。



ヴィッキーとヘンリーのこの後の関係は気になるところ。ヴィッキーの病気が進行した場合、ヴァンパイアになる(というか、ヘンリーがヴィッキーをヴァンパイアにする)という選択肢はあると思うが、〈変化〉が終われば〈親子〉は別れなければならないんだよなー。



蛇足だが、Web上で、訳が読みにくいという意見をいくつか見かけた。私は特に読みにくいとは思わなかったのだが、昔から海外モノの翻訳小説を読みなれているせいかもしれない。
個人的には、分かりやすくこなれた日本語にしようとするあまり原文のニュアンスが損なわれてしまうよりも、日本語として多少固くても原文のイメージをできるだけ素直に伝えてくれる方が格段にありがたい(訳者の思い込みでおかしな訳文になるのは論外)。必要ならば訳注をつけてくれれば良いし。決して簡単なことではないのは承知しているが。
和爾桃子さん訳の本は、今までに数冊読んでいる(『鳥姫伝』、『霊玉伝』、『白薔薇と鎖』、『教会の悪魔』)が、その点私は安心して読める。



準主役?のヘンリー・フィッツロイは、歴史上の人物である。本作には、歴史オタク好きには、にやりとさせられる設定が散りばめられている。



史実のヘンリー・フィッツロイ Henry Fitzroy(1519.6-1536.7)は、ヘンリー八世(1491-1547)の庶子である。彼以外には認知された庶子はいない。母は王の若い(10代後半)愛人だったエリザベス・ブラント(後にギルバート・タルボイスと結婚)。
1525年、6歳で、ガーター騎士、ノッティンガム伯およびリッチモンド公サマセット公に叙せられる。また、種々の重要な職に任じられ、ミドゥラム、シェリフ・ハットン等の所領を付与された。リッチモンドもサマセットも、テューダー王家の由緒ある爵位であり、庶子にしては破格の待遇と言える。リッチモンドの爵位(元々は公爵位でなく伯爵位)はヘンリー八世の父ヘンリー七世の父エドマンド・テューダーの叙爵に始まり、サマセット公位はさらに古く、ヘンリー七世の母方のボーフォート家に受け継がれてきた爵位である。



1533年に3代ノーフォーク公トマス・ハワード(1473-1554)の一人娘メアリ・ハワード(1519-1557)と結婚(14歳)。メアリはノーフォーク公の2人目の妃エリザベス・スタフォード(3代バッキンガム公の長女)との間の子である(1人目の妃であるエドワード四世の五女アン・オブ・ヨークとの間の子供達は夭折)
メアリの兄サリ伯ヘンリー・ハワード(1517-1547)とヘンリー・フィッツロイは幼馴染で親友だった。サリ伯はヘンリー八世により処刑された。父のノーフォーク公も処刑されるところだったが、その直前にヘンリー八世が急死したために命拾いしている。ノーフォーク公位(4代)はサリ伯の長男が継いだ(彼はエリザベス1世に対する大逆罪で処刑された)。
なお、ヘンリー八世の2人目の妃アン・ブリン(エリザベス1世の母)と、5人目の妃キャサリン・ハワードは、3代ノーフォーク公の姪にあたる。



1536年、ヘンリー・フィッツロイは17歳でセント・ジェイムズ宮殿(ロンドン)で死去した。結核が原因と考えられている。彼の埋葬は義父のノーフォーク公に一任され、ハワード家の墓所であったノーフォークのCluniac priory of Thetfordに葬られた。1536年に修道院が解散された際に、彼の墓はハワード一族の墓と共にSt. Michael's Church, Framinghamに移された。
国王の認知された庶子、かつ、公爵位をもつ貴族にも関わらず、彼の葬儀・埋葬は秘密裏に行われたという不可思議な話が伝えられている。



嫡男がいなかったヘンリー八世は、彼を寵愛して王子のように養育し、王位継承者にしようという考えも持っていたと言われる(唯一の嫡男エドワード六世が生まれたのはヘンリー・フィッツロイの死後、1537年のこと)。はっきり言って無茶だが、他にも山ほど無茶やってるからな~



ヘンリー・フィッツロイはヘンリー八世の2人目の妃アン・ブリンとは仲が悪く、アンがヘンリー・フィッツロイと、前妃のキャサリン・オブ・アラゴンの娘メアリ(1世)の毒殺を計画したという説もあるほどだ。
本書の訳者あとがきでも紹介されているが、父王ヘンリー八世は、1536年5月にアンを処刑した際、メアリとヘンリーに「これで、そなたらの命をつけねらった魔女は滅びたぞ」と述べた、という逸話が残されている……無理を押し通してその"魔女"と結婚したのはお前だろうが!(しかも都合が悪くなったら結婚無効にして、罪をでっちあげて処刑)



さて、本作では、ヘンリー・フィッツロイは、17歳で"死んだ"後、ヴァンパイアとして蘇ったという設定になっている。現在の外見は20代半ば。ゆるやかに年をとるヴァンパイア、というのは私には新鮮だったのだが、今時のヴァンパイア事情(というのも変だが)では珍しくはないのだろうか?



御歳450歳を超える庶子公爵閣下の職業は作家なのだが、何を書いているかというとロマンス小説……アレですよ、ハー○クインの類。より正確にはヒストリカル・ロマンス。ヴィッキー曰く"胴着(ボディス)ひん剥き話" (^_^;) 最近知ったのだが、ハーレクインの本社ってトロントにあるんだねー、バッチリじゃん(何が)。

「本を書くのは得意だ。そのおかげで大変いい生活をしている」by ヘンリー・フィッツロイ

高級コンドミニアムに住み、最新型のBMWに乗っていることからして、かなりの売れっ子作家なのでしょう。



で、彼のペンネームがエリザベス・フィッツロイ。異母妹のエリザベス1世(1533-1603)の名前+"王の庶子"を意味するフィッツロイ。
エリザベス1世は母のアン・ブリン(ヘンリー八世の2人目の妃)の結婚が無効とされた(その上で処刑された)ために庶子扱いになった(後に王女に復権された)。しかし、作中のヘンリーの意見は、そもそもヘンリー八世と最初の妃キャサリン・オブ・アラゴン(メアリ1世の母)の離婚(正式には結婚無効)を認めず、よってアン・ブリンとの結婚はあり得ず、エリザベスも自分と同様に庶子だということだろう。



16世紀生まれのヘンリーはあまり背が高くない(168cm)という設定に、ふむふむと納得した。でも、父親のヘンリー八世は長身で有名なんだよなー。祖父のエドワード四世(私は、この二人の血縁関係を思い出すたびに、げげ、と思う)ほどではないが、ヘンリー八世の身長は、6フィート(約183cm)とか6フィート2インチ(約188cm)とか書かれている。もちろん、父親が長身でも息子が長身とは限らないが。ヘンリー・フィッツロイの実際の身長は分からない。もしかすると記録があるのかもしれないが。



ヘンリーは美形らしいが(ヴァンパイアもののお約束)これはOK。父王のヘンリー八世は年食ってからはともかく、若いころはかなりの美男子だったというし、母親も美人(というか美少女?)だったそうだから。



ヘンリーの語る「たいていのヴァンパイアが高貴の出」な理由は面白かったが、石棺の蓋を開けるのもかなり大変だと思うのだけど……。目覚めた時点で既に怪力になってるのか?



ヴィッキーが見たヘンリーの夢もしくは幻(聖母マリアの絵を壊そうとするクロムウェルの円頂党=議会派の手から守った―ヘンリーは敬虔なカトリックだから)が気になる。後のエピソードで出てくることはあるのだろうか?



ヴィッキーはヘンリーが留守電を使うのを面白がっている。でも、私は、地元トロントのホッケー・チーム(リーフス)がNHLで最下位になって、ヘンリーが「軽く憤慨」している方がよほどおかしかったよ。どういう馴染み方をしているんだ。
電話と言えば、1991年発表のこの作品では携帯電話が出てこない。携帯が使われていたら色々状況が変わるだろうなー。



ヴィッキーがヘンリーに言った台詞 ↓ これって『ナルニア』じゃないかと思うのだけど、違うかな?

「ある児童書のくだりがふいと頭に浮かんだの。“彼は飼いならしたライオンとは似ても似つかない”って。あなたはぜんぜん飼いならされてないでしょ、外見はどこもかしこもそんなにお上品なのに」



Blood Series》 ヴィッキー、ヘンリー、マイク・セルッチ、トニーの4人はレギュラーで登場するよう


  • Blood Price 『ブラッド・プライス―血の召喚―』 (1993)

  • Blood Trail (1993) : ヘンリーの友人の人狼に助けを求められる

  • Blood Lines (1997) : 博物館のミイラが復活?

  • Blood Pact (1997) : ヴィッキーの母が亡くなり遺体が行方不明に

  • Blood Debt (1997) : 完結編

  • Blood Bank : シリーズ短編集


《The Smoke Trilogy》 後日譚。トニーが主人公のスピン・オフ。ヘンリーも出てくる。舞台はバンクーバー。





カナダでは、"Blood Ties"のタイトルでTVドラマシリーズになっている(2005)。
原作・TVとも結構人気があるようだ。
Blood Ties 公式サイト(英語)
IMDb





Webで映像が見れるが、ヘンリーが168cm、ヴィッキーが178cm、セルッチが193cm(でかっ)という原作の身長差は無視されているようだ。ヘンリー<ヴィッキーにして欲しかったなー。ヴィッキーの名台詞(というか心の声)「すてき、いい男だわ。でも、ちび」がなくなってしまう~



個人的には、ヘンリー役の俳優カイル・シュミットさん(Kyle Schmid)はちょっとイメージが違う。顔のイメージが違うのは個人的な趣味なので置いておくとして、髪の色は原作どおりストロベリー・ブロンドが良かったよ。私の眼には、ブラウンか、かなりのダーク・ブロンドに見えるのだけど。



TVシリーズのヘンリーは、吸血時(たぶん)に特殊メイクで顔が変わっている。牙は別として、特殊メイクはなくても良いんじゃないかと思うのは私だけだろうか?



Blood Ties - Complete Series 1
DVDは、UK盤のBOXセットが出ている(リージョン2, PAL)。

Blood Ties - Complete Series 1


UK盤は、日本の普通のTV+DVDプレーヤーでは大抵は再生できませんが、PC(パソコン)ならば再生可能です。また、PAL→NTSC変換機能のあるDVDプレーヤー(種類は少ないが販売されている)ならばTVで視ることができます。
【参考】:海外のDVDを観るには 1



Amazon.UKの大幅セール価格につられてポチりそうになったが、ちょっとイメージが違うのに加え、字幕なしらしいので、注文はとりあえずやめておいた。





Copyright(C)since2005 白い猪亭


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『野に咲く白薔薇』

エドワード四世の庶出の娘が主人公のヒストリカル・ロマンス。



野に咲く白薔薇』  (原題 Three Dog Knight 1998)

トーリ・フィリップス (著)





日本語で読めるリチャード三世関連の小説として、2年半程前(汗)に Carpe diem の psy さんにご紹介いただいた本。速攻で購入して一晩で読み、満足した。



エドワード四世(リチャード三世の兄)の庶出の娘が主人公の恋愛物である。時はヘンリー七世治世。リチャード三世もエドワード四世も出てこないが、作中、ランバート・シムネルの乱や、"僭称者"パーキン・ウォーベックへの言及があり、リカーディアン的においしい設定が山盛りの作品(詳しくはpsy さんの記事をお読みください)。






さて、psyさんの紹介記事を読んだ私は、是非読みたい!どこの文庫から出ているんだ?と早速Webで書誌情報を確認し……目が点になった。
は、はーれくいん……微妙だ……
買おうかどうしようか、しばし悩んだが、やはりどうしても読みたくて近くの書店で購入した。
そばに人がいないことを確認し、めぼしい棚を素早くスキャン。十数秒でターゲット捕捉。速やかにレジに持っていき、カバーをかけてもらった。「俺の任務は完了した!」byエーベルバッハ少佐<いや、完了してないから。ていうか、なんか間違ってる。



"はーれくいん"ということでちょっと心配だったのだが、歴史的叙述は結構しっかりしていた。結婚前に教会の前で結婚予告(婚姻の公示)を3回しなくてはならないという風習(というか決まり事)についてさりげなく触れられていたり(伯爵閣下は無理を押し通してたけど)、大逆罪の刑"hanged, drawn and quartered"について書かれていたりと、なかなか。他の文庫から出ていたら、普通に恋愛物の歴史小説で通用すると思うのだけど。ハーレクインはあっという間に絶版になってしまうらしいので残念だ。
紹介文によると、作者のトーリ・フィリップスは、脚本家でもあり、シェイクスピアを含め舞台演出も手掛けてきたそう。ワシントンDCのフォルガー・シェイクスピアン・ライブラリーの舞台にも出演しているという。そういうわけで、テューダー朝の歴史に強いのかもしれない。




ところで、この表紙の絵は合ってるのだろうか↓ 特に文庫版(左が文庫版、右が新書版)。トマスの服装は違うでしょう?一応、伯爵なんですが(しかも喪中。テューダー朝初期)。アリシアの格好もかなり微妙……<歴史オタクはうるさい
それに髪の色も違ってません?(文庫版) 二人とももっと金髪の筈。

野に咲く白薔薇 (ハーレクイン文庫)野に咲く白薔薇 (ハーレクイン・ヒストリカル)



<あらすじ>
テューダー朝ヘンリー七世治世のイングランド。アリシア・ブルームは、ヨークの金細工商の養女として育てられたが、実は前王朝の国王エドワード四世の庶出の娘だった。アリシアの身を案じた養父は、ヨーク派の有力貴族ソーンベリー伯爵と語らい、アリシアを伯爵の三男トマス・キャベンディッシュと婚約させた。
1497年、"僭称者"パーキン・ウォーベックが捕らえられ、ウォーベックを支援していたアリシアの養父母に身の危険が迫った。養父母は大陸に亡命し、アリシアは予定より早く婚約者と結婚することに。しかし、トマスの父と兄達は伝染病で最近亡くなり、トマスが伯爵位を継いでいた。アリシアの秘密を知らされていないトマス、アリシアを追い出して(あわよくばトマスと再婚し)伯爵家の実権を握ろうとするトマスの義姉(次兄の未亡人)。アリシアは無事トマスと結婚して国王の追求から身を守れるのか!



リカーディアン的に重要なポイントは、psy さんの記事にまとめられている通り。


2.リチャードの庶子のキャサリンはヘンリーVIIによって、百姓の暴力夫の元に嫁がされた。


に関しては、史実では、リチャードの庶子のキャサリンは、ハンティンドン伯ウィリアム・ハーバート(c.1455-1491)と結婚している。ハンティンドン伯ウィリアムの前妻はエリザベス・ウッドヴィルの妹メアリ・ウッドヴィル。
キャサリンの生没年ははっきりしないようだが、1487年に亡くなったと読んだことがある(ただし、別の説があるかもしれない)。



アリシアの養父の本名はエドワード・プランプトンとされているが、エドワード・プランプトンという人物は当時実在した。彼に関しては、いずれ書きたいと思う。



クラレンス公ジョージの嫡出の娘マーガレット(後のソールズベリ女伯)がかなり長生きした(67歳で処刑されたが)ことを考えると、アリシアがエドワード四世の庶出の娘だとわかっても放っておかれたのではないかという気もする(庶子でも息子なら別だけど)。ああ、でも、ヨーク公リチャード(エドワード四世の次男)との関係を追及されたらまずいか。
あと、本気で身元を隠す気なら、ブルーム Broom という姓はまずくないか?作中にも出てくるが、broom(common broom)はエニシダを意味する。ラテン語ではplanta genista―プランタジネット Plantagenet の語源となった植物である。
が、その辺を追及するとお話にならないので、あまり気にしないことにした。なお、アリシアの母はジェイン・ショア(エリザベス・ショア)という設定。



作中、アリシアを怒らせることをしたトマスが、「(アリシアが)あの赤みがかった金髪とともに、プランタジネット家特有の激しい気性も受けついでいるとしたら……」とおののく場面がある。欧米でのプランタジネット一族に対する一般的な印象は、やはりそういう感じなのだろうか?



他の点では……とにかく、もう一人の主役である伯爵閣下(トマス)が突っ込みどころ満載でございました。
問題が起こる度に城から逃げ出して狩りに行ってしまうのはまだしも、性悪な義姉が自分の婚約者を追い出そうとしてるの分かってるんだから、誰かにちゃんと声かけていけよ。犬だけじゃなくて!いくら利口で忠実なわんこ達だといってもさー(原題の Three Dog Knight の Three Dog は、トマスの3匹の犬のこと)。主人の婚約者を大歓迎してる家令もいるんだし。

他にも、恋文には自分の名前くらい書きなさいとか(たとえシールで封しても)、自分の結婚の祝宴の最中に妻へのプレゼント捕りに(狩りに)行くなよとか、言いたいことはもう山ほど(笑)。
従者のアンドリューも、こんな御主人、結婚式の日にちゃんと見張ってないとダメだろ!



伯爵閣下、腕は立つし、教養もあるし、演技派で、ついでに美丈夫だけど、このズレ具合とヘタレっぷりはどうしたことか。psyさんが「チューダーの粛清の嵐を乗り越えていかれるのか気に掛かりました」と書いてらしたが、本当によく無事だったよなーと思わずにはいられない(『野に咲く白薔薇』は、キャベンディッシュ家年代記というシリーズものの1作で、他はトマスとアリシアの子供や孫の話。『貴婦人修業』は1520年にカレー近郊で行われた"金繍平原の会見"が舞台で、息子達の話もヘンリー八世治世らしい)
元々キャベンディッシュ家はヨーク派なので(ボズワースの戦ではリチャード三世側で戦った)、アリシアのことがなくても注意しないとまずいのだ。まあ、奥方(アリシア)がしっかりしてるのと、伯爵閣下はいざという時にはうまいこと振る舞えたのでしょう、きっと。



この話が結構面白かったので、シリーズの他の話も読もうかと思ったのだが、ヨーク家とは関係なさそうなのでやめた(笑)
無茶苦茶奥手だったトマスと違って、息子達は別に奥手ではないらしく、長男のブランドンには庶子もいる。まあ、父方の伯父に似ても、母方の祖父(エドワード四世)に似ても、女好きになりますわな。いや、トマスの息子達が女好きなのかどうか知らないんだけど。次男のガイは女性に絶望して修道士になろうとしたらしいから(『沈黙の騎士』)女好きではないのか<何故そんなに気にするんだ、自分



《キャベンディッシュ家年代記》シリーズ(時系列順):タイトルの後ろは主人公の名前



  • 野に咲く白薔薇 Three Dog Knight:エドワード四世の庶出の娘アリシアと、ソーンベリー伯トマス・キャベンディッシュ

  • 貴婦人修業 Lady of the Knight:トマスの従者アンドリュー

  • 沈黙の騎士 Silent Knight:トマスとアリシアの次男ガイ

  • 身代わり婚約者 Midsummer's Knight:トマスとアリシアの長男ブランドン

  • ハロウィーンの奇跡 Halloween Knight:ブランドンの庶出の娘ベル

  • 水都の麗人 One Knight in Venice:ブランドンの庶出の息子フランシス

  • 囚われの聖女 The Dark Knight:ガイの長女ガストニア

  • 十二夜の騎士 Twelfth Knight(『聖夜の恋人たち 'Tis The Season』所収):ガイの三女?アリサ

  • 道化師は恋の語りべ Fool's Paradise:ベルの孫娘エリザベス


《キャベンディッシュ家年代記》シリーズ(原書刊行順)



  • 道化師は恋の語りべ(1996)


  • 沈黙の騎士(1996)


  • 身代わり婚約者(1998)


  • 野に咲く白薔薇(1998)


  • 貴婦人修業(1999)


  • ハロウィーンの奇跡(2000)


  • 水都の麗人(2001)


  • 十二夜の騎士(2001)


  • 囚われの聖女(2002)

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