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英国史上まれに見る極悪人として名高いリチャード三世の真の人物像を探ることを目的としています。
シェイクスピアの描いたリチャード三世以外のリチャード三世像があることを、一人でも多くの方に知っていただければ幸いです。
2012年9月12日、レスターのグレイフライヤーズ修道院跡からリチャード三世の遺骨が発掘されました!(2013年2月4日に調査結果が発表されました)

Happy Birthday Richard! ―(珍しい)肖像画―

本日はリチャード三世の555回目の誕生日です!

振り返ってみると、王様の昨年のお誕生日に、「近いうちにレスターのことを書く」つもりでいた、ようだ……1年経っても書き終えていないとは。とりあえずは、"レスター案内"を完結させるつもりでいます。お付き合いいただけますと幸いですm(__)m

さて、今回は、リチャードの珍しい肖像画をご紹介したいと思う。

Richard III, From a Painting on Glass belonging to Trinity College, Cambridge.

Paston Letters (パストン家書簡集) 挿絵

Paston letters : Original Letters, Written during the Reigns of Henry VI, Edward IV, and Richard III (1859) より
(Link先はGoogle Book Searchの該当ページ)

1840年(Charles Knight, London)および1859年(H. G. Bohn, London)発行の書籍に、この挿絵がある。

RICHARD III.
From a Painting on Glass belonging to Trinity College, Cambridge.

というキャプションがついている。



この絵を偶然みつけた時は、小躍りして喜んだ。
な、何だか、美少年ぽいではないか!……ひょっとしてエドワード五世と混同しているのではないか、という疑いをとっさに抱いてしまったのだが、鎧をつけてるからエドワード五世ということはないだろう。それでも、誰か別人と間違っているのではないか、という疑いは捨てきれないのだが。えーと、例えばリチャード二世とか。
ナショナル・ポートレート・ギャラリーの肖像画の劣化コピーとしか思えない絵は良く見かけるが、こういうのは初めてだ。

このガラス絵、実物がまだあるならば画像が見たいと思って探したのだが、さっぱり分からない。Trinity
College のどこにあったのか、いつ頃のものなのか、そもそも現存するのか。

ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジは、1546年に、ヘンリー八世により、ケンブリッジ大学の学寮の一つとして建てられた。ヘンリー八世の建てたカレッジにリチャード三世の絵が飾られていたのは不思議な気もするが、この挿絵の載っている版が出版されたのは、19世紀半ばであるから、比較的新しい絵の可能性もある。

◇ Paston Letters (パストン家書簡集) について

パストン家書簡とは、15世紀・ばら戦争下のイングランド(ノーフォーク)に暮らしたジェントリの一族(パストン家)が残した手紙・文書である。その数は膨大で、総計1000点以上にのぼる。

ジェントリ Gentry(紳士階級とか卿紳と訳されることもある)とは、物凄く単純に言うと、地主階級である。貴族 Peer ではない平民だが、平民と聞いて想像されるような庶民ではなく、準貴族とでもいうべき(下級の)支配階層であった。治安判事等の地方の行政職に就いたり、議会の庶民院を構成していたのは、彼らである。



パストン家の人々は、当時のイングランドにおいて、取り立てて重要な活躍をしたわけではないが、自分達の日常を綴った大量の書簡により、不滅の名を残すこととなった。荘園を巡る争いや訴訟問題、その他、結婚の交渉、息子の学費、買い物の指示、家族間のいさかい、といった記述の間には、見聞きした歴史上の事件の断片も記されている。
これらの書簡は、中世イングランドの社会を考える上で貴重な史料となっている。

パストン家書簡が世に知られたのは、1787年。ノーフォークのジェントリでアマチュアの歴史研究家だったジョン・フェン John Fenn が、『ヘンリー六世、エドワード四世およびリチャード三世の御代にさまざまなる貴顕の士々によって書かれた直筆書簡集』というタイトルの2巻本を出したのが最初である。もっとも、タイトルに偽りありで、書簡のほとんどは、3世代にわたるパストン家とその周囲の人々の手によるものだった。この書簡集は宮廷や文学愛好家の間で大評判になり、フェンは当時の国王ジョージ三世により、ナイトに叙された。



続いて、フェンは3巻と4巻を出版し、フェンの死後、5巻をフェンの甥が出版した。
その後、1870年代にはジェイムズ・ガードナーが3巻本を刊行(1890年代に6巻まで刊行)、1904年には同じくガードナーが新たな版を刊行した。1971~1976年にノーマン・デイヴィスが2巻本の新版を刊行し、現在はこれが標準版とされている。



第1次ばら戦争の間に、リチャード達兄弟(マーガレット、ジョージ、リチャード)は、パストン家所有の屋敷で暮らしていたことがある(母のヨーク公妃セシリィがロンドンの屋敷を借りた)。

また、Society of Antiquaries of London(ロンドン古物協会)所蔵のリチャード三世とエドワード四世の肖像画を所有していたのはパストン家である。
 リチャード三世の肖像画   エドワード四世の肖像画

【Link】 BBC - History - Paston Family Letters (英語)

《パストン家書簡に関する書籍(和書) 2点》



中世の家族―パストン家書簡で読む乱世イギリスの暮らし中世の家族―パストン家書簡で読む乱世イギリスの暮らし
(原題 A MEDIEVAL FAMILY : The Pastons of Fifteenth-Century England)


フランシス・ギース <Frances Gies>, ジョゼフ・ギース <Joseph Gies> (著)
解説:佐藤 賢一
ISBN: 4022575972; 朝日新聞社 2001年
3150円(税込) 絶版



一般の(歴史専門でない)出版社からこんな本も出ていたのか!と狂喜乱舞した1冊(知った時点で既に絶版だったが…)

中世イギリスに生きたパストン家の女性たち―同家書簡集から
中世イギリスに生きたパストン家の女性たち―同家書簡集から


社本 時子(著)
ISBN: 4422230026; 創元社 1999年
1995円(税込) 絶版




こちらも興味はあるのだが、未読
各章のタイトルは次のとおり

第1章 『パストン家書簡集』/第2章 パストン家の成立過程/第3章 気難しいアグネス/第4章 試練にたえたエリザベス/第5章 一家のヒロイン、マーガレット/第6章 初恋を貫いた長女マージョリー/第7章 パストン家に嫁いだマージョリー・ブルーズ


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コメント

秋津羽様;晩上好!又
恭賀寿辰,陛下!
まずは、この場を借りてお祝いを述べさせていただきます。
今年はゾロ目&猪年ということで、洋菓子店を営む友人にお願いしてバースデイケーキなど作製してもらってしまいました。とりあえず「お供え」してありますが、さて、この後どうしようかと…(アホ!)
まあ600回目はかろうじて、生きてる可能性がありますが、次のゾロ目はまず無理だろうと思いますので…
とにかく何かしたかった気持ちだけ汲んでやってください。

"レスター案内"今後も楽しみにしております。
取り急ぎ失礼いたします。
Shangmei et 理査 様、こんばんは!
記事をUPするのが遅くなってしまいました。

>今年はゾロ目&猪年ということで、洋菓子店を営む友人にお願いしてバースデイケーキなど作製してもらってしまいました
おおー!凄いです。ケーキ!猪マークつきでしょうか(ドキドキ)<単純な奴

今後もよろしくお願いいたしますm(__)m
ぎゃー! 日付が変わっちゃった!
けど英国はまだ2日ということで、王様、お誕生日おめでとうございます!
Shangmei et 理査さん、王様のためにケーキを注文とはすごいです。どんなケーキなんでしょう。
みんなでバースデーパーティーをやりたいですね(笑)

そして秋津羽さん、レアな肖像画をありがとうございます。はじめて拝見しました。
確かにリチャード二世のようにも見える…
いやいやしかし、ここは素直にキャプションを信じましょう。
お祝いありがとうございます!

>みんなでバースデーパーティー
それは楽しそうです(笑)

>ここは素直にキャプションを信じましょう。
そうしまーす(^^)
秋津羽様;晩上好!
先日は早々のレスありがとうございました。
少し日にちが経ってしまいましたが…
>ケーキ!猪マークつきでしょうか
>どんなケーキなんでしょう
生チョコレートの5号台に、白のバタークリームで「Happy Birthday Richard!」と「Loyaulte me lie」の文字、マジパン製の白薔薇とホワイトチョコで猪の絵&555と描いたチョコレートの板を飾ってみました。といったところです。(我ながら、毎度アホな事を…と思ってますが)つき合ってくれた友人には感謝しております。
>みんなでバースデーパーティー
既に来年へのカウントダウンも始まってるようですし…(笑)
ついでに、Mlle C様をはじめ、此方への常連様達と一緒に「欧州おたくツアー」でも行けたらどんなに楽しかろうかと…
妄想は膨らんでまいります。

ところで、所謂肖像画ではありませんが、つい先頃、核軍縮絡みで軍事関係のサイトを見ているうちに何故かこんなところにたどり着きました。
現代の作家さんによる「Military Art」 らしいです。(もしかしたら御覧になったことがあるかもしれませんが)
http://www.milartgl.com/HTML/richard_iii_2.htm">http://www.milartgl.com/HTML/richard_iii_2.htm
こんばんは!すっかりご無沙汰してしまいました。
王様ケーキ(^^)のご報告ありがとうございました。良いご友人をお持ちですね(^^)

ご紹介いただいた「Military Art」、何やら見覚えが(笑)
現代作家さんのMilitary Art、こちらにもありますよー↓
http://www.studio88.co.uk/acatalog/Medieval_Prints.html">http://www.studio88.co.uk/acatalog/Medieval_Prints.html

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